どうも、最近思うのは「日本人は個人情報について無頓着になっている」と言うことだ。個人情報とは個人情報保護法の規定によると「特定の個人を識別することが出来る情報」となっている。この定義からすると、なにも「住所・氏名」だけではなく、多くのものが個人情報になりうるのだが、知らない人が多い。
以前勤めていた会社は「個人情報取扱事業者」だったので、個人情報については弁護士のレクチャーを受けるなど、厳密に取り扱うよう求められていた。その、レクチャーによると、例えばメールアドレス一つだけでも個人情報になりうると言うことであった。企業のメールアドレスで多いのは、「個人名@会社名」という構成である。これだと、○○会社の誰それさんという一個人を容易に特定できるので個人情報になるのだとのことである。確かに、法の定義に照らし合わせてもその通りであると言える。
何故、こんなことを書くのかというと、武雄市が図書館の指定管理者をカルチャコンビニエンスクラブ(以下、CCC)にすると共に、CCCが発行しているTカードを図書貸し出しカードの替わりにすることが発表されたからだ。Tカードを図書貸し出しカードにするということは、図書貸し出し履歴を一民間企業に提供すると言うことである。しかも、Tカードは多くの個人情報を持っており個人情報データベースを構成している。そこに、地方自治体が「個人情報の構成要素たり得る」図書貸し出し履歴を提供するのだから、問題がないはずがない。
ちなみに、個人情報保護法では地方自治体に対して「個人情報の適正な取扱いを確保するために必要な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する」と規定している。その規定と照らし合わせれば、個人情報保護法違反と言われても仕方のないことだろう。
ところが、Facebook等の反応を見ると、武雄市の施策に関して好意的な意見が多いのである。何故なのか?「住所・氏名」が無いと個人情報と定義しないという誤った認識があるからだ。例えば、私が持っているTカードには「会員番号と氏名」が記載されている。先の誤った定義によると「個人情報ではない」と言うことになるが、個人情報保護法の定義では「他の情報と容易に照合することができることによって特定の個人を識別することができる情報」とも規定されているから、充分に個人情報たり得るのである。そこに図書貸し出し履歴が体系的に取得されれば、個人情報データベースとなりうる。その事を知らないから、武雄市の施策に安易に賛成してしまうのだ。
今一度、個人情報とはなんなのかを学習するにはよい機会ではないかと思う。個人情報に対して無頓着でいると、いつの間にか膨大な個人情報を取得されていることに気が付かないこともありうるだろう。最悪のケースとしては、個人の生活が丸裸にされている可能性だってありうるのである。個人情報は一個人が意識的に行動しないと守れない時代になっていることは間違いのないところ。やはり、一人一人が意識を持って「個人情報」に向き合わないとダメなのだと言うことを認識すべきであろう。
ちなみに、武雄市長は発表会の場で「個人情報」についてツッコミを受けたところ、怒り心頭だったようである。彼は、市長という要職にありながら「個人情報保護法」を御存知なかったようだ。残念な話である。